2日目 蟹田→千歳



前日あれほど疲弊したというのに、きっちり6時に起床した。

宿で昨夜購入しておいたおにぎり2個でエネルギーを補給。

まだ肌寒さはあったが眠たい体に潮風は心地よかった。

この日は津軽線を完乗するためまず三厩駅まで向かう。

この区間はフリーきっぷのエリア外であるため別途切符を購入した。

7時7分、津軽線三厩行きが蟹田を発った。

7時46分、津軽線のターミナル・三厩駅に到着。

駅舎と車体の撮影、駅スタンプの押捺だけの、7分間の滞在だったが、

津軽半島最北端の駅に降り立つのは実に感慨深いものがあった。

佐々木旅館 蟹田駅

三厩駅 津軽線

8時33分、再び蟹田に戻り、特急白鳥93号を待つ。

待ち時間は20分程。

俄に活気づいてきた蟹田駅の前で写真を撮っていたら、

地元のおじいさんが写真を撮ってくれるとのことだったのでお願いした。

その方は元々JRの職員だったようで、関東地方の各支社で働いていたそうだ。

我が地元栃木県の話題にも明るく、ついつい話し込んでしまった。

というような想定外のことがあるとやらかすのが私である。

案の定というかなんというか、乗り逃してしまった。

次発は1時間後。

少々予定は狂ったが、そもそもスカスカなダイヤ編成だったので

他の計画に影響することはなかった。

せめてもの救いだ。

思いがけず発生した空き時間は特にすることもなく、とりあえず海を見に行った。

やはり海は良い。心が洗われる。

しばらくぽけーっと時間を潰した後、今度は20分前にホームで待機することにした。


津軽蟹夫

狭いホームに入ってきた特急スーパー白鳥95号は、

かつて見たことのないボディデザインで圧倒された。

この津軽海峡線を走る列車に乗り、待ち望んだ北海道へと向かうことになる。

ゴールデンウィークということもあってか自由席は既に埋まっていたため、ドア付近の通路に立つ。

ここも人で溢れかえっていたが致し方ない。

青函トンネル手前で乗務員の交代があった。

管轄が東日本から北海道へと変わる瞬間である。

初めて通る青函トンネルで興奮していたが、その実情はあっけないものだった。

無論地下のトンネルなので面白くも何ともないものなのだろうが、

廃止になった吉岡海底駅や竜飛海底駅が見えないかと期待していたのだ。

結局残念ながら点在するランプの明かりしか見ることはできなかった。

揺られること数十分、ついに目の前に北の大地が広がった。

この旅のメインである江差線を始め、初めてのJR北海道に胸は高鳴るばかりである。

北海道最初の到着駅は木古内という地であった。

ホームに掲げられたホーローの駅名標に萌える。田舎最高!

木古内駅
津軽線

現時刻は10時48分。

江差線江差行きは11時48分発だったためこれまた1時間の空きがある。

まずは窓口で記念入場券を購入した。

切符やら入場券やらを集め出したらキリがないことは重々承知の上だが、

限定などと言われてしまうと引くことはできない。

手にした硬券入場券をニヤニヤと眺める姿はまるでオタクみたいだったのではないだろうか。デュフフ。

さて少々早いが散策がてら昼食を取ることにした。

木古内駅周辺はまさに田舎の駅前といった感じだったが、廃線となる同路線を惜しむ地元の方々が

臨時でアンテナショップを出すなどして盛り上げようと躍起になっていた。

一方で駅の中には2015年度に北海道新幹線木古内駅が開業する旨を示すポスターがあった。

利便性の向上を図るため新たに産み出される物もあれば

旧く、時代に即さず手放される物もある。

発展のためには致し方ないことかもしれないがやはり心苦しい。

そのようなことを思いつつ先述のアンテナショップで函館和牛カレーを頂いた。

こちらはコクがあり実に美味しかった。

駅前のお土産屋さんでさらに江差線タオルなる記念品を購入し、ホームへと戻った。

硬券入場券10駅セット
函館和牛カレー

発車時刻にはまだ20分程あったが既に当該列車は到着しており、

さらに全国から集まったであろう鉄ちゃんたちがカメラを構えていた。

自分も負けじと一眼レフを構えその姿をしっかりと収める。

と、ここでなにやら巨大なカメラを構えた一行がいることに気付く。

腕章などから察するに地元テレビ局のクルーのようだ。

やはり話題性があるのだろう。彼らもきっちり乗車し、旅客にインタビューを行っていた。

私は先頭車両の運転席の後ろに陣取った。

写真を撮るならここが一番いいのだが、他の多くの鉄ちゃんたちもここに乗り込んできたため

大分窮屈なスペースとなってしまった。

11時48分、江差駅に向かって出発する。

山あいの、集落もおよそ見つからないような場所を進んでゆく。

だが沿線には引退間近の路線に手を振る人々が数多く集まっていた。

江差線沿いには「天の川駅」という、モニュメントとして作られた建造物がある。

列車は停まらないがホームや駅名標がしっかりと建てられているのだ。

そこにも見物人は多く集まっていたが停車はしないので見られる時間も少ない。

通過してしまいそうになったその時、急に列車の速度が落ちた。

わざわざ見に来て下さった方々を慮っての運転士と車掌さんの粋な計らいであった。

悲しいのは我々だけでない。

運行に携わってきた職員の方々だって名残惜しいのだ。

木古内駅


少々しんみりしつつも写真を撮り続けていると、ついに海が見えた。

渡島半島の西岸に、終点・江差駅に近づいてきたのだ。

12時55分、最大の目的地、江差駅に到着した。

ホームは人で溢れかえり、熱気に包まれていた。

もっとも、それらは廃線前にやってきた熱狂的な鉄ちゃんたちがほとんどであろう。

廃線間際になりそれまで乗降数が少なかった場所がいきなり盛りあがるのはなんとも皮肉な話である。

こうならないために早い内に完乗したいものである。

さて江差駅に着いたはいいが、12分後に再び折り返さなければならない。

朝の三厩駅同様、撮影と駅スタンプの押捺で切り上げなければなかったのが残念だった。

ホームに戻ると何故か鉄ちゃんが列車の案内を行っていた。

駅員を差し置いてご苦労なことですね。

鉄道ファンの株を下げてくれなければいいんですがね。

13時7分、再び木古内へ向かう。

江差駅


14時13分、木古内着。

今度はここからスーパー白鳥11号に乗り函館駅へ向かう。

これで残存区間も乗ることになり、江差線を完乗することができた。

40分程乗車し、函館駅に到着。

函館では小雨が降っていた。

どうも、旅行やらイベントやらのときには必ず雨を降らせる男、ゐわむらです。

少々気が滅入ってしまったが、どうせ市内の移動などしないのだから気を取り直して次の列車に乗ることにする。

15時13分、今度は函館本線の一部を通るスーパー北斗11号に乗車するのだが、

函館本線というのがこれまた完乗を目論む者にとってネックとなるのだ。

七飯から大沼までの区間は本線といわゆる藤城線という支線があり、

また大沼から森までの区間は本線と砂原支線があるのだ。

スーパー北斗は藤城線区間と本線区間を通るため、帰路では別ルートを通らねばならない。

実に乗り鉄に優しくない作りだ。

函館駅で缶コーヒーを購入し一息つきながら1時間15分ほど特急を満喫する。

海を右手に列車は北上する。

スーパー北斗 函館駅
ジョージアサントスプレミアム 大沼

16時30分、長万部駅に到着。

ここでまた分岐がある。

長万部から札幌に行くには2パターンある。

スーパー北斗が通る室蘭本線と千歳線を乗り継ぐルート(海線)と

函館本線をひたすら往くルート(山線)である。

後者は本線であるのにローカル線と化しているようだ。

乗り鉄としてはやはり後者に乗らねばなるまい。

ということで2時間40分かけて小樽へと向かうことにする。

たった1両での運行だがそれなりに人は乗っていた。私はおじいさんと相席だった。

中にはやはり時刻表を広げ大きな荷物を持った人もいた。メイビー同種

列車は未だ雪の残る山をえっちらおっちら進んでゆく。

駅間が長く、数分間停車しないということもざらにあるもんだから北海道は凄い。

最初の頃こそ写真を撮っていたが、それも次第に飽きてきた。

疲労も徐々に体に出始めたのでついに寝てしまった。

19時13分、やっとこさ小樽駅に到着した。

今までの各駅とは違い流石に賑わいがあった。

駅から臨む夜景が非常に美しかった。

昼食からかなり間が空き、エネルギーも失われつつあったためここで夕食を購入した。

海の輝き」という海産物をふんだんに使った贅沢な駅弁である。

私はウニが苦手なのだが、この弁当はそれを感じさせないほどの美味であった。

昆布駅
小樽駅 函館本線
海の輝き 海の輝き

揺られることおよそ45分、20時13分、北海道最大の札幌駅に到着した。

何と言ってもデカい

地元最大である宇都宮駅の数倍のスケールに笑うしかなかった。

駅周辺を散策の後、今度は快速エアポートで千歳線の支線・空港線を通り、新千歳空港駅へ向かう。

空港に用はないのだが、支線に乗るためだから仕方ない。

空港の空気感はこの上なく好きだから実は願ったり叶ったりなのであった。

21時23分、新千歳空港駅着。

この空港もやはりデカい。

施設だけで言ったら羽田よりも充実してるのではないか。

遅い時間帯だったため展望デッキには入れなかったので

通路の窓からぼんやりと発着する航空機を眺めていた。

駅や空港といった施設は何故こうも情緒があるのだろうか。

独りしみじみとしているといい年したアベック(古い)がやってきたので逃げるように立ち去った。チクショウめ。

50分程滞在し今度は千歳駅へ向かう。

ようやくこの日の全行程が終わる。

22時21分、千歳駅着。ここもそこそこ賑わいがあった。

札幌駅 新千歳空港駅
新千歳空港 千歳駅

この日の宿はホテルホーリンというビジネスホテル。

ほぼ列車に乗っているだけの一日だったが、

またしても腹が減ってしまったので晩酌がてら夜食を取ることにする。

北海道限定のサッポロクラシックを呷り、北海道限定のやきそば弁当を頂いた。

カップ焼きそばのお湯をスープにして飲むという地域性(?)に驚いた。

こんなところでも非日常感を得られるのだから北海道凄い。

満腹になった後はシャワーで一日の垢を流し、早々に床に就いた。

翌日は秘境・小幌駅へ向かう。

残るは一日だがまだまだ興奮は冷めやらない。

ホテルホーリン サッポロクラシック