初日 宇都宮→仙台



◯旅のはじまり

 2015年7月25日。うだるような夏の熱気に目が覚めた。時刻は午前6時。前日の仕事の疲れなど気にせずスタート地点の宇都宮へと向かう。

 今回は東北地方へと向かうことだけ決め、その他の細かい旅程は全く考えていない行き当たりばっ旅である。列車内でひたすら時刻表とにらめっこが予想されるがそれもまた一興か。

 一抹の不安を抱えながらも0718時宇都宮発の東北本線に乗る。とりあえず素直に北を目指すのは面白みがないので一旦南下してみることにする。スタンプを押すためだけに石橋で下車し、続いて小山で降りる。8時をまわり、日も照ってきた。この日も暑くなりそうだ。小山では水戸線に乗り換える。水戸から常磐線で北上することにしたのだ。一見無駄なようだが未乗区間だし丁度いい。0822時、小山を発った列車はのんびりとした田園風景の中を突き進んでいく。

宇都宮駅
宇都宮駅。旅が始まる。
宇都宮駅
宇都宮線を南下する。
小山駅
小山駅。陽射しが暑い。
水戸線
水戸線で水戸を目指す。


◯序盤の常磐線

 水戸は曇り空が広がっていたが、やはり暑い。1005時、ここからの常磐線は初めて乗る区間になる。しばらくは住宅街だったが、日立では遠くに海が見え少々テンションが上がる。やはり海はいいものだ。列車に揺られることおよそ2時間。東北最初の下車駅・いわきに到着した。外は曇っているがめちゃくちゃ暑い。今度は磐越東線で郡山に戻ろうとしたのだが、空き時間が長かったのでもう一度常磐線で行けるところまで行ってみることにする。目指すは広野。とその前に駅弁を買っておいて車内で食べよう。不通区間へと続く常磐線は地元民とおぼしき人たちでそこそこ埋まっていた。ボックス席に座り駅弁を広げる。乗っているだけで疲れる鉄旅ではこれが楽しみの一つだ。鼻腔をくすぐる海の幸の香り。山の合間から臨む海。最高の環境で食べる駅弁のなんと趣深いこと。さぁていただきまーす!! ってとこで箸がないことに気付いた。残念なことにどこを探しても入っておらず、結局お預けになってしまった。

 なんてことしているウチに列車は広野に着いた。5分で列車が折り返してしまうので、下車印と駅スタンプの押印と撮影を済ませなければならない。で、こういうときに限って改札口が混むんだよなぁ。ホントにギリギリになってしまって、改札口から逆のホームまでの階段をダッシュするハメに。そのときの駅員さんとのやりとりがなんか青春っぽかった

駅員さん「乗るの!?」(改札で)
私「はい!!」(急ぎながら)
駅員さん「走って!!」(反対ホームを指して)
私「はい!!」(駆け込む)

まるで漫画のワンシーン。間に合って良かった。

水戸駅
水戸駅。人がいない…。
常磐線
常磐線。海だ!!
いわき駅
いわき駅。小ぎれいな駅舎。
広野駅
広野駅。いかにもな田舎の駅であった。


◯田舎ロケーションが素晴らしい磐越東線

 広野から折り返しいわきに戻って来た。この時点で1309時。次の磐越東線は1313時。乗り換えはやはりシビアだ。だがいわきではやらねばならないことがある。そう、箸をもらうことだ。反対側のホームの弁当屋だったがこちらも走ったらなんとか間に合った。ようやく飯にありつける。昔ながらの気動車に乗り込みさっそく食べようとしたが、磐越東線はジモティーでいっぱいだった。セミクロスシートだったが座ろうにもハンパな空き具合だったので列車最後部で立って写真を撮ることに。また飯はお預けだ。小川郷あたりで高校生たちが数人降りたのだが、そこで席を空けた一人が「ここ座って良いですよ」と話しかけてくれた。 おお、東北人の優しさよ。ふいにきた親切に感動してしまった。でもロングシートよりボックスシートのが良かった。(失礼)

 のほほんとした田んぼと山々。ザ・東北という感じ。夏の陽射しを浴びた緑が実に良いロケーション。冷房と陽光がマッチしてつい微睡みの中へ落ち込んでしまった。船引まで来ると人が増えてくる。地元高校生の会話が完全に東北訛りで親近感を覚える。1448時、終点の郡山に着いた。

いわき駅
いわき駅に舞い戻る。駅名標のくたびれっぷりが良い。
いわき駅
磐越東線で郡山へ。
磐越東線
ワンマン気動車。
磐越東線
磐越東線の車窓から。


◯再び舞い戻る東北本線

 郡山からはまた東北本線に戻る。さすが幹線だけあって利用者が多く、ロングシートである。まだ飯が食えない。福島で乗り換える。ボックス席に一人発車を待っていると、背中から何やら視線を感じる。振り返ってみると同時に声をかけられる。

男性「18きっぱーですか?
私「!!」
男性「胸ポケットからきっぷが見えたので」

 確かに私はポロシャツの胸ポケットにきっぷを挿していた。なるほど彼も大きなリュックに時刻表を携えている。同類だ。彼は北東パスで東北を巡るという。今まで乗った路線などを語り合いながら東北本線は進んでいく。旅は道連れ。初日から面白い出会いがあった。

東北本線
東北本線で福島へ。
福島駅
福島で乗り換える。


◯鉄道むすめin仙台空港

 そのまま北上を続ける彼とは名取で別れる。どうせなら仙台空港鉄道に乗ってみようと、私が下車したのだ。宮城の街中を走る路線は洗練されていた。空港に至る路線ということで大きなスーツケースを持った人も多く、勝手に旅情を高めてくれた。空港独特の空気感がこれまた良い。このまま空いた路線でどこかへ飛んでいこうかとも思ったが帰ってこられなくなりそうだったのでやめておいた。さて、折り返しの列車にはまだ余裕がある。ここでようやく昼に買った駅弁を食べることができた。この時点で17時過ぎ。もはや夕食だ。

 少々休憩を取って直通列車で仙台へ向かう。仙台なら泊まれるとこくらいあるだろうと、ここをこの日の宿泊地にしようと決める。さすが東北の要衝というだけあり、規模がでかい。宇都宮なんて目じゃない。宿泊地を決めたはいいが、この時点で1830時、まだ日は出ているし、もうちょっと移動したい。そこで目を付けたのが仙石線。仙石東北ラインもできたことだし、この路線に乗って初日を終わりにすることにした。

東北本線
東北本線。日が傾き始めた。
名取駅
名取で下車。仙台空港鉄道に乗る。
仙台空港駅
仙台空港駅では杜みなせちゃんがお出迎え。
仙台空港
仙台空港展望ロビー。外に出られないのが残念。
仙台空港駅
仙台空港駅。
浜街道潮目の駅弁
いわき駅で買った浜街道潮目の駅弁。ようやく…。


◯石巻へ行くの巻

 まずは起点のあおば通に向かう。仙台からは一駅だがもちろん鉄道を使う。だがあおば通行きのホームが今イチよく分からない。駅員さんに尋ねると「歩いた方が早いですよ」という答え。口には出していないがおそらく、いやそうじゃねぇんだよという顔をしていたのだろう、すかさず「電車の方がいいですか?」と聞き返してくれた。無事鉄道であおば通に着いたが、確かに鉄道使う必要もないくらいの距離だった。起点に着いたのですぐ石巻方面の列車に乗り換える。仙台界隈はさすがの乗車率。19時を過ぎ、ついに日も落ちてしまい、乗り換えの高城町に着く頃には真っ暗だった。窓口も終わっていてスタンプは押せず。  ここの待ち時間を使って仙台の宿を押さえようと電話するも、どこもいっぱいとの回答が。いよいよ駅寝が視野に入ってきたがとりあえず列車が来たので石巻へと向かう。やってきたのは仙石東北ラインの新しく綺麗な車両だった。人は少ないしボックスシートで落ち着けるし快速だしで言うことなしである。そうして訪れた石巻は大きな駅かと思いきや思いの外小さな駅だった。地元民が駅前でたむろしてるのがいい感じの雰囲気である。ここもすぐ折り返して仙台へ戻る。

仙台駅
仙台駅。デ、デッカーイ。
仙石線
仙石線で石巻へ。
高城町駅
高城町駅。窓口は閉まっていた。
石巻駅
石巻駅。石ノ森章太郎押し。


◯ネカフェ難民

 帰りは仙石東北ライン経由なので上手いことどっちも完乗できた。だが仙台に戻ったところで宿がない。頭によぎる駅寝の二文字。しかし人も多い仙台での駅寝は警察一直線間違いなしである。当てもなくぶらついていると、目に入ってきたのはネットカフェ。絶対疲れが残る環境だがそれでも野宿よりはいいだろう。意を決してネカフェに泊まることにした。初めてのネカフェ。終始緊張しっぱなしだったが、それなりに快適さはあったので驚いた。これまで旅してきた中で一番の安宿だが、プライバシーを気にしなければこれはハマるかもしれない…。シャワーが混んでいて浴びられなかったのが痛かったが。周辺に適当な飯屋もなかったのでコンビニ弁当を夕食にした。なんかホントにダメ人間になった気分。ゴロゴロダラダラと翌日のあたりをつけて過ごす。0時を過ぎても細かいところまでは決まらなかったが、色々寄り道しながら盛岡に向かうことにし、深い眠りへと落ちた。

石巻駅
石巻駅ホーム。仙石東北ラインで仙台へ。
夕飯
ファミマのおろし豚丼(まろやかポン酢)。悲しい。