2日目 仙台→盛岡



◯知らない(ネカフェの)天井

 スマホのバイブで6時に起きる。決して快適とは言えないネカフェで寝たため身体はバッキバキ。ダラダラと支度し、すぐさま仙台駅へ向かう。この日も大して予定は決めていないのだが、とりあえず「さようなら江差線」のときにきちんと行けなかった利府支線を乗りに向かう。朝日を浴びた緑が目に優しい。利府にも岩切にも駅スタンプがなくちょっとテンションが下がる。

 利府支線に揺られながら、この辺りを攻めつつ三陸方面を回って盛岡まで行こうと決める。石巻線に乗るため小牛田へ。田舎なのに無駄にでかい駅舎がいいね。841時、小牛田を発った石巻線はホントーにのどかなワンマン気動車。終点へ近づくへつれ海がいい塩梅に広がってくる。女川では地元の祭りが行われているのか、わりと賑わいを見せていた。この駅もスタンプがないが、田舎の活気にココロオドル。また来た道を折り返し、今度は前谷地で気仙沼線に乗り換える。この路線は鉄路が途中で終わってしまうので柳津までの乗車となる。これまたのどか〜な田園地帯をえっちらおっちら進んでいく。

利府支線
緑が映える利府支線。
利府駅
駅スタンプがない利府駅。
小牛田駅
駅スタンプがある小牛田駅。
石巻線
石巻線で女川へ。
石巻線
女川に近づくにつれ海がきこえる。
女川駅
女川駅。地元の祭りかな。


◯復興半ばの被災地へ…

 続いてここからはBRTに乗り換え。鉄道ではないが鉄道の代替路線なので一応これも完乗の対象にする。ドライバーがグラサンしているあたり自由度が高いぜ…。BRTは路線バスと同じで駅に人がいないと停まらないのね。山がちの国道45号線をあえぎあえぎ走っていく。陸前戸倉を過ぎ、一般道からBRT専用道に入る。おそらく元々線路だったところなのだろう…。鉄道の整備も早く行って欲しいものだ…。右手には穏やかな海が見える。とても大災害を引き起こした海とは思えないのが恐ろしい。だが、周りを見渡せば、まだ復興は半ばといったところなのだろう、作業途中の工事現場が目立つ。しばらく一般道と専用道を交互に往く。地元高校生が乗ってくるなど地元の足としてしっかり機能しているのだなぁ。大谷海岸には海水浴客もいたし車の通りもそこそこあったし、徐々に徐々に街へと近づいているらしい。南気仙沼に近づくともう完全に栄えた街になっていた。

柳津駅
柳津駅でBRTに乗る。
BRT専用道
BRT専用道が見える。

橋が落ちて通行止めになっているところも。

海は穏やかな表情を見せている。


◯懐かしのホヤぼーや

 実は気仙沼には2年前、大学の授業の一環で訪れたことがある。友人とともに復興商店街の壁に大きな「ホヤぼーや」を描いた、思い入れのある地だ。2年前は気仙沼駅にBRT専用道なんてなかった。変わりつつあるなぁ。久々に降り立った気仙沼は陽射しがめちゃくちゃ強い…。そういえば壁画を描いたのもこんな真夏だった。思い出に浸りながら商店街を目指し、歩く。手ぶらだが折角なのでお世話になった方々に挨拶をしに行く。その商店街では毎年この時期に夏祭りを開いていて、この日は多くの人が直前の準備に勤しんでいた。そんな中、フラッと立ち寄った私を歓待して下さったのは実に嬉しいことであった。昔話に花を咲かすのもそこそこに、商店街を後にする。アイスコーヒーごちそうさまでした。

気仙沼駅
気仙沼駅。懐かしさがこみ上げる。
ホヤぼーや
2年前に描いたホヤぼーやが出迎えてくれた。
紫市場
南町紫市場。皆さんありがとうございました。

まだまだこれから。


◯東北の、夏

 暑い。気仙沼の方々曰く、「この夏一番の暑さ」という。歩くだけで汗が噴き出るわけだ。ちょっとばかし立ちくらみを起こすも駅に向かわねばならない。気仙沼から今度は大船渡線のBRTでを目指す。この路線は2年前に少しだけ乗ったことがある。どれほど変わっているのか楽しみだ。宮城と岩手の県境は長い長いトンネルになっている。トンネルを通った気もするがこんなに長かっただろうか。そして気仙沼線と比べると酷く揺れ、宮城より復興が進んでないことを思わせる。とはいえ、陸前高田の駅は以前来たときのプレハブでなく立派な待合室ができていたので多少は良くなっている。奇跡の一本松駅など新しい駅も作られ、このままバスが定着してしまうのかと一抹の不安が胸を過る。高田高校前では高校生の集団が乗ってくる。この子たちも震災のときは小中学生だったと考えると感慨深い。津波の被害が大きく線路の跡地が使えないのだろう、大船渡線は専用道が殆どない。地域も鉄道もいち早い復興がなされることを願うばかりだ。1時間20分程のバス旅、に着いたのは1630時ごろだった。

陸前高田駅
2013年の陸前高田駅。
陸前高田駅
2年の時を経て、比較的立派な駅舎に変わっていた。


◯南リアスの海岸を往く

 盛では三陸鉄道南リアス線に乗り換える。フツーに乗車券を買った後に硬券乗車券があるとの案内を発券発見。入場券でなく乗車券ってのがミソで、どうせなら終点まで買いたい。悩んだ挙げ句、盛から釜石までを購入。計2160円。思い出を金で買い、スタンプも押していざ乗車…! と、いつも通り乗ろうとしたらあらびっくり。まるでホテルのような内装ではないか。無駄にテンションが上がる。テンションの高い旅人を乗せた列車は釜石を目指し発車。右手には海が陽光を湛え、実に綺麗なのだが、いやにトンネルが多いのが残念。しばらく進み甫嶺では中学生くらいの女の子が乗車しようと走ってきた。出発時間は多少押したが、運転士さんもしっかり待っててくれ、ローカル線ならではの温かみを感じる。そんなのんきな空気感に高かったテンションもいつしか落ち着き、ついウトウトしてしまった。

盛駅
三陸鉄道盛駅。硬券あるならもっと分かりやすい表示を…。
三鉄南リアス線
南リアス線の車両。外装だけでなく…
三鉄南リアス線
内装もリッチ。
三鉄南リアス線
なかなか乙な車窓の風景。


◯イーハトーヴォ エスタス ボーナ (岩手は良いです)

 さて釜石では人の良い窓口のおばちゃんにスタンプを出してもらう。おばちゃんは、リュック背負ってカメラぶら下げた私の姿と、これまで沢山スタンプを押してきたクロッキー帳を一瞥すると「乗り鉄? 撮り鉄?」と興奮した様子で聞いてきた。「どっちもです!」と高らかに応じ、三鉄の駅を後にした。あんまりちんたらしていると次の釜石線に乗り遅れるのでここでもダッシュ。釜石線には宮沢賢治に因んで「銀河ドリームライン」という愛称があり、各駅にはエスペラント語で別名が付けられている。急いでいた私はそんなことにも気付かず、釜石駅の駅名標を観逃してしまった。ショック。釜石線ははじめこそ(田舎の)街なかといった感じだったが松倉あたりからもう凄い山、山、山。陸中大橋を出た後の眺望が最高だった。夕焼けが山の稜線に良く映えている。山がちな大自然を一駅一駅通り過ぎ、やがて日は沈んでいく。沿線には灯りも少なく寂寥感は一層増す。

仙台駅
釜石駅。渋い。
仙石線
釜石線で盛岡へ。
高城町駅
駅名標にはエスペラントが併記されている。
石巻駅
そろそろ日も暮れてきた。


◯大都会盛岡

 そして2038時、ようやくこの日の宿泊地、盛岡に着いた。一日中鉄道に乗りっぱなしでもう腹も減りすぎていたのでコンビニで飯を調達。焼そばBAGOOOONが東北に来たことを思い知らされる。仙台に比べるとさほど活気のない県庁所在地をしばらく歩くと、ホテルニューカリーナに到着。きちんとしたベッドで寝られるのは最高ですな。翌日の予定でも立てれば良いのにビールを飲んでしまったらダラダラと盛岡での夜が過ぎていった。

盛岡市内
盛岡駅前。ビジネスホテルばかりだ…。
夕飯
焼そばBAGOOON。東北っぽい。