3日目 盛岡→青森



◯花輪線 一番

 やはりベッドは快適だ。結構疲れも出てきているが、0550時にすんなり起きられた。この日は北海道新幹線開業準備のため、8月10日以降、当面の間通過になってしまうという津軽今別に降り立つことを目標に、北を目指すことにする。大きな盛岡駅とはいえ朝の駅前は人影も疎ら。18きっぷの区間外だが「さようなら江差線」のときに乗れなかったIGRいわて銀河鉄道に乗り込む。こちらは地元高校生などで割と人が乗っている。ボックスシートが取れなかったのが残念でならない。好摩で花輪線に乗り換えるため一旦下車。旅も3日目で結構下車印が増えてきたからか、この駅の下車印を押してもらうときに駅員さんから話しかけられる。
「きょうはどちらまで? 花輪線?」
「そうなんですよ〜さらに青森まで」
「ああ、まぁ遠いけど一日あれば行けるね」などなど。
 こういう交流があるのが嬉しいねぇ。やはり駅員さんはこうでなくっちゃ。さらに乗り場に迷ってうろうろしてたら「花輪線、ナンバー1!」となぜか英語混じりで1番線だと教えてくれたのでなかなかポイント高いよ好摩駅。

盛岡駅
盛岡駅。日中ほどの活気がない…。
IGRいわて銀河鉄道
IGR銀河鉄道。青と黄色の補色対比が個性的。
好摩駅
好摩駅。駅員さんがファンキー。
好摩駅
好摩駅の陸橋からの眺め。


◯はるばる来たぜ大館

 0724時好摩発。これから2時間半かけて大館へ。花輪線も非電化で、田園を横目にディーゼルエンジンを唸らせながらゴトゴト走っていく。松尾八幡平〜安比高原にかけてはもうものっそい山の中。そのまま秋田県に入ると今度は川沿いを進んでいく。清らかな水の流れが夏を一層際立たせている。そして1000時、大館に到着する。ここは有人改札という風情のある駅。ちょっと早いがこのあたりで駅弁を調達しようと併設されたニューデイズを物色する。お土産などは置いてあるのだが、肝腎の駅弁がない。店員さんに聞けば、既に完売だそうだ。鶏めし人気過ぎるぞ!!

花輪線
好摩駅から花輪線に乗車。

BGMには久石譲の曲が相応しい。

映り込みは気にしないでください。
大館駅
大館駅。有人改札があってこその鉄旅。


◯WELCOME TO WARP ZONE!

 さて、ここからはちょいとばかし小技を使う。18きっぷの使用を諦め、特急つがるで一気に青森までワープするのだ。ふふん、これが社会人の財力よ…。とかほざいてみたが、後々返済地獄が待っていることなどこのときは考えるに至らず、とにかく津軽今別に行くことでいっぱいだった。乗り込んだつがるは鈍行とは比べものにならない、贅沢なシートだった。白沢を越えると下り線は大きく分岐してトンネルコースを通る。ああ、これは今度上り線も乗らなくてはならないパターンか…。弘前では人がどっと乗り込んでくる。夏休みだからか家族連れが多い。子どもたちはおじいちゃんおばあちゃんの家にでも行くのかな。夏になっても帰省せず鉄道乗り回すような大人になったらアカンよ。


特急つがるでワープ。

奥には大きく別れた線路が見える。


◯海鳴りだけを聞いている

 1141時、定刻通り青森に到着。日中降り立つのは初めてだし、駅の外に出た途端に海が見えるのでテンションが上がる。次の津軽線は1317時発なのでかなり時間がある。駅弁を買って海を見ながら食べるという粋なことをすると決め込む。やはり港の雰囲気はえも言われぬ切なさがあって好きだ。潮騒に耳を傾けていると、別にこれから連絡船に乗って凍えそうな鷗を見つめて泣くわけでもないが、ノスタルジックな感情が湧いて出てくるから不思議だ。翌日に備え、青い森鉄道のフリーきっぷも買っておく。もうここまで来たらある程度帰るルートも限られてくるしね。

特急つがる
青森駅に着いた特急つがる。
青森湾
青森湾が目の前に。
青森湾
海を見ながら駅弁を頂く。風情がある。
大人の休日 津軽物語
駅弁「大人の休日 津軽物語」。渋い。


◯はにかんでいこう〜 蟹田へ行こう〜

 1317時、ロングシートが残念な津軽線で蟹田へ向かう。こちらも昼に乗るのは初めて。沿線には古民家が建ち並び、時代に取り残されてしまったように錯覚してしまう。蓬田を越すと、右手に海が!! 陸奥湾を望みながら列車は蟹田へ辿り着く。2年前とちっとも変わらない駅がそこにはあった。別に故郷でも何でもないのだが、何となく帰ってきた感じがする。さて、また乗り換えるのだが、このまま直接津軽今別に行っては面白味に欠けるし、ダイヤも丁度いいので一旦三厩まで行ってしまうことにする。今度の車両は窓が開くタイプのボックスシート!! それはもう夏の風を一身に浴びて気持ちいいのなんの。車内の空調も扇風機ってところが実に良い。北国だが夏の空気は生暖かいのだが、トンネルに入るり急に流れ込んできた冷たい風は、天然のクーラーのよう。少々山がちの区間もあったが、三厩を前に再び海沿いに出る。以前来たのは5月だったため、また違った風を感じる。

津軽線
青森駅から津軽線で蟹田まで。
蟹田駅
蟹田駅。ちょうど三厩行きが入線してきた。

風が心地よい。

これがホントの鉄道ファン。
三厩駅
三厩駅。やはり味がある駅舎だ。
津軽線
乗って来た車両で折り返す。


◯今別の男と二股で〜

 乗って来た車両に乗り込み、津軽二股を目指す。「津軽今別じゃないの?」と思った方は良く読んでいる人。何も気付かなかった人は最初から読み直し。嘘です。読んでくださりありがとうございます。実は津軽今別と津軽二股は同じ駅と言っていいレベルで併設している。今別の方はJR北海道が、二股の方はJR東日本が管理しているのだ。そしてその津軽今別が新幹線の開業で、2016年に奥津軽いまべつとなってリニューアルオープンするという。というわけで二股の方で降りて、今別で乗るという、アーモンドグリコみたいな、一粒で二度美味しい下車なのである。どうせ二股なんて辺鄙な駅で降りるのは自分一人だけだと思ったら、ぞろぞろと降りていった。よく見たら蟹田から三厩まで同じ列車に乗っていた人たちではないか。それぞれグループというわけでなく単独のテツの方たち。やはりみんな考えることは同じらしい。なんか話しかければ友達になれたのかもしれないが、乗り換えまでの短い時間で駅を撮ったりスタンプを押したりやることは色々あるので今回はパス。1545時、やってきた特急白鳥に乗り込む。

津軽二股駅
津軽二股駅。こっちは吹きさらし。
津軽今別駅
津軽今別駅。階段を上っていくと…

列車通過の案内があった。
奥津軽いまべつ駅
周囲には奥津軽いまべつ駅へ向かう建物も。
津軽今別駅
現在のくたびれた駅舎が…
津軽今別駅
こんな感じの立派な駅に変わるっぽい。


◯試される大地へ

 乗り込んだ特急白鳥、実は下り線である。ということで乗ったが最後、次の停車駅は北海道・木古内である。なんというダイヤの偶然か、北海道まで行くことになってしまった。うぅむ、これぞ行き当たりばっ旅。座席は結構いい塩梅に埋まっていたのでデッキに立つことにした。時刻表を眺めたりなんだりしているうちに列車は青函トンネルに入っていた。以前来たときは信号場かなんかで一度停車した記憶があるからすっかり油断していた。仕方がないのでしばらく真っ暗なトンネルの中を眺めていたら、分岐ポイントを見つけた。かつて廃止になった海底駅に向かっているのだろうか。夢が膨らむ。長い長い青函トンネルを抜け、木古内に着いた。さー何もない木古内、ここで時間を潰すこともなんなので函館まで行ってやることにする。と、乗車の前に下車印と駅スタンプ、さらに記念乗車券の購入を済ませる。

特急白鳥
津軽今別で特急白鳥に乗り込む。ここから北海道へ向かう。
木古内駅
北海道最初の停車駅・木古内。
江差線
江差線で函館へ。
北海道新幹線記念入場券
北海道新幹線の開業を記念した入場券セット。買っちゃうよねぇ。


◯時間がねぇ ダイヤがねぇ スタンプ探してぐーるぐる

 函館へ向かう江差線は既に多くの人で埋まっている。仕方がないので車両後方のロングシート部分に座る。松前半島から亀田半島へはほぼ海岸線に並行して走っているので、丸みを帯びた地形が良く見える。郵便局が併設された駅など趣深い駅も多々ある。よく考えたら前回は特急ですっ飛ばしたため車窓からの風景を楽しむ余裕なんてなかったのだ。やはり鈍行最高!!と、ここで江差線の起点は函館でなく五稜郭であることにも気付く。この区間も新幹線の開業とともに三セクに委譲されてしまう。ならばと、ろくに調べもせず起点の五稜郭で降りてしまった。駅名の看板が星形だ…笑 特にすることもないので北海道らしくコアップガラナで水分補給。そして適当に降りたばっかりにここからが怒濤である。
1807時、五稜郭発。
1813時函館着。下車印、駅スタンプ、駅舎撮影、切符購入。滞在終わり。
1821時函館発。
 えぇい、アホか。函館滞在時間8分ておい。しかもここから特急に乗ってしまうと18きっぷの効力が及ばないのでまたしても余計な出費だよチクショウ。ってかあんなに急いだのに定刻過ぎてるじゃねぇか!! チクショウメ!!


海岸線がはっきりと見える。
渡島当別駅
郵便局と駅とが一体化している渡島当別駅。降りてみたい。
五稜郭駅
五稜郭駅で降りてしまったばっかりに後々大変なことに。
五稜郭駅
そうは言っても駅舎が良い感じだったので全然OK。
函館駅
そして辿り着いた函館駅。滞在時間8分。

ここでも金に物言わせて特急乗車。


◯これから始まる大レース

 函館を発つと、あたりは徐々に暗くなってきた。滞在時間が8分しかなくても、夕焼けは誰しも等しく輝きを見せている。青函トンネルに入るというアナウンスはきちんと座席に着いたら流れた。ケータイの電波は入らないので車内販売で駅弁でも買って飯を食うことにした。ビールが実に美味い。ところでこの日は青森に宿を取っていたのだが、この宿、2030時までにチェックインしないと部屋に入れない仕組みなのだ。ダイヤでは2018時到着予定。そもそもギリギリなのだが、さらに運の悪いことに列車に遅れが生じている。2020時ごろ宿から電話が来る。まだ青森駅に着いていない旨を伝えると少々呆れられてしまった。そして遅れること7分、列車は2025時、青森に着いた。タイムアップまであと5分。きっぷに無効印を押してもらう余裕もなく、自動改札へ。予め起動しておいたGoogleマップを頼りに猛ダッシュ。駅寝だけは嫌だ駅寝だけは嫌だと頭の中で繰り返し、自らを奮い立たせる。入り組んだ路地に入り、迷うことを直感したが諦めてはそこで全て終わってしまう。手元の時計が2030時を指しかけたその時、宿の看板が目に飛び込んできた。2029時、間一髪、チェックインすることができた。なんでこんなに余裕がないんだ。


特急白鳥の車窓から。
夕飯
青森海鮮ちらし寿司。一日2回駅弁を食うという豪遊っぷり。


◯月曜どうしよう ミスター インキー事件

 ベッドが目に入った瞬間、疲れがどっとこみ上げてきた。盛岡にいたのが遠い過去のように思える。しばらくダラダラしているとさっき飯は済ませたにもかかわらず、ちょっと小腹が減ってきた。青森の街も見てみたいし、買い物に出てみることに。ケータイと財布を持ってドアを開ける。
「あ、そういやカギ忘れt「ガチャン」
 ここに来てまさかのインキー。やっちまった。ヤバい。フロントはさっき私のチェックインを済ませたら閉まってしまった。緊急連絡先の電話も繋がらない。これは一晩ロビーで過ごせということか…。一人腐っていると、フロント隣の管理室から灯りが。藁にもすがる思いでノックしたら先ほど対応してくださった方がいらっしゃるではないか。またしても呆れながらもカギを開けてくれ、何とか事なきを得た。死ぬかと思った。いてくれてありがとうございました。今度は無事外出できました。アイス食って小腹を満たし、2330時、眠りに就いた。

青森市内
青森のホテルから出てすぐ、ライトアップされた橋が見えた。

ガリガリ君リッチ ほとばしる青春の味。こんなところに青春が。