3日目 岩見沢→釧路



なんとなく、クリステル

 6時30分起床。さすがに身体の節々が痛くなってきたが、むち打って宿を飛び出す。岩見沢の朝は昨夜と同じく閑散としていた。7時ちょうどのスーパーカムイ1号滝川を目指す。滝川は根室本線の始発駅。ここから乗り継ぎ乗り継ぎ終点の根室へ向かう。滝川での乗り換え時間は6分だが、駅舎の撮影とスタンプの押印は忘れない。急いで改札に戻ると駅員さんから声をかけられる。
「どこまで!?」
「富良野!!」
「1分しかないよ!! 急いで!!」
東北行き当たりばっ旅の常磐線でもこんなことがあったなぁとしみじみ。ダッシュで跨線橋を駆け上がって列車に乗り込むと、早朝だというのにまたしても溢れんばかりのチャイニーズ。次の駅で乗ってきた高校生集団が「マジかよありえねぇ」と呟いていた。大挙する中国人は地元民からしても考えられないようだ。

スーパーカムイ1号
岩見沢駅に入線してきたスーパーカムイ1号。
滝川駅
滝川駅は工事中でした。


根室線443.8キロ

 この旅2度目の富良野に到着。うーん、清々しい。ここからは2時間かけて帯広に向かう。今にして思えば途中、新得で降りて置き忘れたクロッキー帳を取ってくれば良かった。帯広で降りるためにスルーしたが、後々送料が高くついてしまった。さて、その新得ではボックスシートの対面におじいさんが乗り込んできた。時刻表を眺めていると気になったのか、向こうから話しかけてくれた。「どこから来たの?」「あれが十勝岳」「根室まで行くの? 根室の方からは晴れていると国後も見えるんだよ」などなど。気さくな人の多い北海道。こういう交流が嬉しいねぇ。帯広でも乗り換えがシビアだがしっかり撮影と押印は行う。だがあまりに焦りすぎてエスカレーターで盛大にすっころぶ。幸いけがはなかったが、胸ポケットに入れておいた蛍光ペンを落としてしまったようだ。ここからはスーパーおおぞら3号の指定席なんだからそんなに慌てずとも座れたのに。無駄にダメージを負ってしまった。


富良野駅、再訪。

根室本線。こんなところで通過待ち。
帯広駅
帯広駅。蛍光ペンを落とした。
スーパーおおぞら3号
スーパーおおぞら3号で釧路へ。


花咲駅は廃止になりました

 時刻は11時40分。せっかく特急に乗ったので弁当が欲しい。やってきた車内販売を呼び止めると、なんと売り切れ。新得始発で1駅しかないのに完売とは恐るべし。仕方なくチーズケーキとコーヒーのセット、そしてチップスターで空腹を紛らわす。釧路までは特急でも1時間半。北海道の広さを思い知る。前のシートでトランプに興じている高校生たちを微笑ましく眺めつつ到着を待つ。釧路での接続も5分しかないが、どうせこの日のうちに戻ってくるので乗り換え列車に直行する。ここからはいわゆる花咲線である。2時間半の長旅だが飯も食えずひもじい。


昼食代わりのおやつ。寂しい。

スーパーおおぞらの車窓からは太平洋も。


 花咲線はクロスシートで窓も開く。またしても進行方向右手、海の見えるシートに陣取りカメラを構える。しばらくパシャパシャ撮影していると、後ろの席の乗り鉄と思しきおじさんから「寒いので半分閉めてもらっていいですか」と。マジか!! こんなに暑いじゃん!! なんならあなたの方が暑そうですけど!! と思ったが、感じ方は人それぞれだし配慮に欠けていたと反省。「スミマセン。何なら全部閉めますよ」と答えるも「いやあ、撮影あるでしょうからいいですよ」と、逆に気を遣っていただいてしまって恐縮です。

 花咲線はおっそろしく長いし山深いし、おまけに携帯は圏外ときたもんだ。そんな感じだったので別当賀あたりでようやく見えた海は感動的だった。さらに進むと馬たちがだだっ広い牧場で放し飼いになっていて、これまた北海道の大自然に圧倒される。いよいよ日本の東の端も近い。16時ちょうど、列車は根室に到着した。

朱文別駅
花咲線(根室本線)で根室へ。

踏切でぽつんと列車の通過を待つ車はもの寂しい。

遠くに海が見え、テンションだだ上がり。。

老後は牧場主でもいいなあ。

2時間半かけてようやく根室に到着。
根室駅
終着・根室。日本最東端の有人駅。

どこだと思ってんだ、最東端だぞ!

 日本最東端の有人駅・根室は降り立った瞬間に空気の違いを感じる。夏だというのにひんやりとしている。ここからさらに東は納沙布岬。バスに乗り込んで向かおうと思ったが、行って帰ってくると釧路まで戻れなくなるので断念。いずれ観光で来るさ。ではどうするか。今乗ってきた列車に再び乗り込み、1駅手前の東根室へ行くことにした。こちらは正真正銘、日本最東端の駅である。乗るのは高校生が数人いたが、降りるのは私だけ。列車がコトコトと釧路方面へ過ぎ去ると辺りは静寂に包まれる。板張りのホームに聳える「日本最東端の駅」の立て看板に一人感慨に耽っていた。

根室駅
根室は日本最東端の有人駅。
東根室駅
東根室に降り立ってみると…
東根室駅
こちらは正真正銘、日本最東端の駅。
東根室駅
東根室駅前。何もない。


誰か4枚目の画像・謎の文字? 記号? が記された看板の詳細教えて下さい

 東根室を堪能したところで、ここには何もないので根室の市街地へと向かうことにする。時刻は16時台だが、次の釧路方面の列車は19時台(しかも最終列車!)。3時間近くあるので、走ることはしない。寄港地の根室は異国情緒、もとい、ロシア情緒が漂う。標識にはロシア語が併記されていてのほほんとしているかと思いきや、北方領土の返還を求める看板などもあり、住民たちの複雑な感情が窺い知れる。北方領土に関しては他人事ではなく、我々国民全体が関心を持たねばならないことだが。


ロシア語が併記された標識。

可愛らしいアザラシとは裏腹にしっかり主張。

味のある簡易郵便局も。

これは何を示しているの? オカ板的な要素がある。


 なかなか楽しい散歩を終え、17時前くらいに根室駅前に戻ってきた。いい加減、腹も減ったので名物でも食べようと思う。駅前の観光案内所で聞いてみると、「エスカロップ」というものが名物という。はてさて耳慣れぬその料理は喫茶店で食べられるというので早速行ってみる。駅前すぐにあったニューモンブランという昔ながらの喫茶店に入る。早速目当てのエスカロップを注文する。いかにもマスターって感じのご主人で、雰囲気も実によい。待つこと十数分、アツアツのエスカロップが運ばれてきた。なるほどバターライスの上にカツが載っかっている。数時間ぶりの食事ということを差し引いても実に美味い。手軽に満腹になるしもっと全国の喫茶店に普及してほしいなぁ。

ニューモンブラン
ここがエスカロップを食べられるという喫茶店。
エスカロップ
これがエスカロップの正体。もっと普及してもいいくらい。


 さて、食後は散歩して海でも見に行こうと思ったのだが、喫茶店を出た瞬間にもの凄い。ロシア語併記と相俟って異世界に来てしまったんじゃないかってくらいの濃霧。夏だというのに気温は10℃台。いくらなんでもこれは想定外だった。吹き付ける風がクソ寒い。港に人の姿はなく、一人佇む私はまるで今から身投げしにやってきた人のようになっていた。というわけで残念ながら国後は見えなかった。すぐさま引き返し駅の待合室で時間を潰すことにした。本数が少ないからか、利用客が続々やってきた。ホーム入り口前で先頭に立ち、改札を待つ。

根室港
飯食ったらもの凄い霧。海が全然見えない。
根室駅
駅前もこんな感じに。
根室駅
この簡素な時刻表。19時を逃すともう釧路に行けません。
根室駅
肌寒い根室駅で入線を待つ。


釧路はもっといても良かった

 19時ちょうどの列車で釧路へ向かう。一応海側の座席は取ったが、もう暗くなりつつあるので車窓の景色も大して楽しめなさそうだ。これからまた2時間半、乗ると思うと少々気が重い。特にこれといったエピソードもなく、列車はフツーに釧路に到着した。改札外には阿寒湖が近いからかマリモが飼われて(?)いた。なんだか癒やされる。この日の宿は運良く空いていた駅前の宿。うーん、ネオンが高度経済成長期!! どんなバブリーなホテルかと思いきや、フロントのおねーさんの物腰が柔らかくてこれまた癒やし。天然温泉も癒やし。つまりちゃんとしたいい感じのホテルだった。大満足。ディナーは北海道らしくやきそば弁当とビールとつまみでうまし。うだうだしながら0時頃、眠りに就いた。

根室駅
19時発・釧路行の花咲線。

全くどこかは分からないけど綺麗だ。

マリモがおりました。生マリモって初めて見た。かわええ。
釧路駅
釧路駅。木製の看板が渋い。
スーパーホテル
社員旅行とかで賑わったんだろうなあって感じ。
やきそば弁当
北に来たらやっぱりこれ。たらこは味付き。バターは風味。