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バックトゥ北海道

チョムリアップスオ!!
1月末に仕事でカンボジアに行ってきて変な風邪もらってきたけど、その分休みも3日間もらったので3月4日のダイヤ改正前に旅に出たんだZ!! 行き先は10駅が廃止になる北海道。またしても北海道フリーパスを使って、なるべく多くの駅を訪れ最後の姿を目に焼き付ける。冬の北海道は初だけど一体どうなることやら。 3日間という短い休みの中、超高速で各地を回るのでR!!

今回のダイヤ改正で廃止になるのは函館本線の東山、姫川、桂川、北豊津、蕨岱、千歳線の美々、根室本線の上厚内、稲士別、島ノ下、釧網本線の五十石の10駅。多いし遠いし本数少ないといずれも三拍子揃った駅たちだ。割と突然決まった連休だったので行きの航空券は取れなかったから、新幹線で行くことにした。初めて乗る北海道新幹線。終点が新函館北斗だから、自ずと函館本線周辺を狙いに行くことになるのかな〜。




走れ超特急

旅の始まりはいつも通り宇都宮。大都会なのだが北海道新幹線は停まらないので仙台で一度乗り換えることになる。運賃・特急料金合わせ2万円ほど。思いの外安価で買えたことに驚く。これなら週末にフラッと函館に遊びに行くのも全然アリ。まぁそんな頻繁に行けるほど休みも金もないけど。

仙台で北海道新幹線に乗り換えると、車内アナウンスが流れる。「ようこそ、冬の北海道へ」など、東北新幹線では聞かないようなセリフで、北の大地へ遊びに行く人々の気分を盛り上げてくれる。もうすぐ開業1周年だが、ぜひこういうのは続けていって欲しいもの。海峡の長い青函トンネルを抜けるとまたトンネルであった。ひゃあどんだけトンネル続くねん、と独りごちながら時折見える車窓の雪景色から北海道ということを何となく理解する。いよいよスピードも落ち、新函館北斗に着くのも近い。さあて、どこまで行けるか。



はるばる来たぜ新函館北斗

寒ッ!! 降り立った北の大地のホームはやっぱり寒かった。道南でこの寒さって、これから行く無人駅はどうなんだ。などとダジャレを言うと余計に寒くなってきて、5千円で買ったベンチコートも役に立たないのではないか不安になってくる。ひとまず下車して駅舎の撮影と駅スタンプの押印。間もなく1周年を迎える立派な駅舎。人の姿は少ないが頑張ってほしいものだ。 さて、この日は函館本線の廃止予定駅に向かいたい。とりあえず特急・北斗13号長万部を目指す。



長万部→中ノ沢

長万部に降り立ったのは15時21分。ここから目指すとすれば南側の北豊津か北側の蕨岱だが、後々のことを考えると比較的接続のよい北豊津にすることに。ただ、長万部から次に出る列車は16時14分。1時間近く待つくらいなら、1つでも多くの駅を使いたいのが俺である。約4.7キロ先の中ノ沢まで歩いてみることにする。




中ノ沢駅へ延びる大沼国道はひたすら真っ直ぐ続き、アメリカっぽさがある。あれだけ寒かったのに、歩いていると身体が温まり汗すらかいている。交通量はそこそこあるが、歩く人の姿なんてない。夕方に差し掛かり、いい塩梅で差す西日に、かつての栄華を思わせる廃墟が映えている。私はそれを横目に両脇に雪が残る歩道を独り寂しく進んでいく。






Googleマップを頼りに歩いたり走ったりすること約50分、ひっそりとした横道の先に駅舎が見えた。毎度のことながら、乗り換えはスポーツだ。えも言われぬ達成感がある。


奥に何やら建造物が。



中ノ沢→北豊津

中ノ沢駅の出発時間は16時20分。15分ほど余裕を持って着くことができた。駅名標は雪に埋まり、誰が使うんだというレベルの無人駅。今回の廃止対象にはならなかったが、ここもいずれなくなってしまうのではないだろうか…。








だがそんな中、この駅にも人の手が入った跡があった。それがこれである。





なんと可愛らしい雪だるまではないか。地元の子どもかあるいは旅人か。いずれにしても味気ない旅に活力を与えてくれるのは間違いなく、ほっこりした気分でやってきた列車に乗り込む。





北豊津→国縫

定刻通りやってきた列車で向かったのは北豊津。乗車時間はほんの10分。これは本当に鉄道旅なのだろうか。考える間もなく列車は北豊津に滑り込む。どうせこんなところで降りるのなんて自分だけだろうと思っていたら、なんと高校生くらいの若者も下車するではないか。格好から推察するにジモティー。最寄り駅がなくなってしまったら大変だろうに…。






北豊津駅は無人駅のはずだが、詰め所みたいなのもあり、そこには地元のおじいさん方がいた。のでコミュニケーションを図る。

「どこから□×#※?」

「栃木です」

「内地から%@$◎?」

「ええ内地から」

おじいさん方の喋りは殆ど聞き取れなかったがかろうじて分かった部分から推測して答える。北の大地で異文化コミュニケーション。

「次の列車に△♭&〒?」

「いえ、時間あるので国縫まで歩こうかと」

「!! そしたら♀☆*!! 一時間♂=©!!」

ははあ、歩くと一時間かかると言っているのだな。やはり全然聞き取れなかったが非常に親切にしてくださったのが心に沁みる。おじいさんズと別れ、約5キロ離れた国縫駅を徒歩で目指す。





再び戻ってきた大沼国道。国縫発は17時41分なのでやっぱり猶予は一時間ほど。日は大分傾き、寂寥感が増してきた。一直線の国道は物流の要となっているトラックや家路を急ぐ乗用車がビュンビュン飛ばしている。誰かこの寂しい旅人を拾ってくれないかな、などとちらちら車道を見ながら歩くも、そんなドラマは一切なかった。元よりそんな他力本願では降り潰しなんてやってられない。いい加減棒になってきた両足に活を入れて国縫までスパートをかける。




辺りは大分暗くなってきた。



国縫→森

さーようやく国縫駅に着い…でかっ!! 思いがけず現れた立派な駅舎に面食らう。




こんなに大きいのに無人駅。確かに周辺は開けていたから、かつては乗降客数も数多くいたのだろう。Wikipediaによると2013年の一日平均乗車人員は4人。在りし日の栄華が虚しい。待合室に置かれた駅ノートに感想を残し、今度は駅へ向かう。







森→桂川→森

時刻は18時41分、辺りはすっかり真っ暗になってしまった。3年ぶりに訪れた森。駅のスタンプが一つ撤去されていて、なんとも時の流れを感じる。この日は宿を森に取ったのだが、まだ時間があるのでもう1駅だけ頑張ってみる。というか行きたい廃止駅は10駅もあるのに1駅しか行ってないのでは気が済まない。向かうのは森の隣、桂川。ガチガチに固まった駅前のアイスバーンの道を北へと、この日最後の行脚へ出発。






真っ暗な道を10分程歩くと、右手から警笛が。しまった、何も歩かずとも折り返しの下り列車があったのではないか。今更気付いても後の祭り。虚しく去って行く列車を尻目に2.7キロを往く。






こえーよ。 橙色の街灯にぬぼうっと現れる神社、踏切。海鳴りだけが響く街。こんなところに駅なんてあるのか、不安ばかりが募る。これは異世界に迷い込んだとかいって2chにスレ立ててもいいレベル。そしてようやっと辿り着いた桂川。もちろん人なんていない。ゆっくり歩いていたらギリギリになってしまったが、年季の入った駅ノートに書き込みだけ済ませ、19時25分、森行きの列車に乗る。これで初日の行程は終わり。




桂川駅も人の気配がない。



2日目 森→東山→姫川

前日は割と早い時間にホテルに入り、ビールを飲んだりホタテの浜焼きを食ったりカイジさながら豪遊…! だがそんな甘くないのが鉄旅。2日目は6時1分に森を出発しなければならない。冷え込みも厳しく心折れそうになったが、列車は通学の高校生たちでほぼ満席の状態。毎朝こんな厳しい条件下で学校に通ってるかと思うとなんだか頑張れそうな気がする。この根性をもっと別のことに使えばいいのに




列車に揺られること約20分、板張りの駅・東山に到着。降りる人はもちろん、乗ってくる人もいない。いぶかしげな目をした高校生に見守られながら、そこに降り立つ。かろうじて照明はあったが、待合室はなく、これは廃止も致し方ないと思える造りだった。買っておいた缶コーヒーも一瞬で冷えてしまう寒さの中、同じく廃止になる隣の姫川まで2.9キロを歩く。




駅にも駅周辺にも何もない。


徐々に日が昇り、また長い一日が始まる。7時前だというのに国道はトラックの往来が激しい。世間は自分のあずかり知らぬところでバンバン流れている。こんな何もない北の大地で何やってんだ俺は。寒いし足痛いし、もう帰っちゃおうかな。さっき高校生からもらった元気もどこへやら。ちょっと腐ってたところでふと振り返ってみると…




なんて美しい朝日なんだ! 英語で言ったらWhat a wonderful sunrise! 駒ヶ岳(多分)から差す陽光に、はらりと涙が落ちることはなかったが、それでも積もった雪に反射する日の光は胸を熱くさせるものがある。しかもここは上姫川橋。姫川駅も近い。


姫川→森 ほか

さて、2.7キロの道のりを歩ききり、Googleマップは姫川駅を指している。だが駅に至る道がない。国道からは雪の積もった畑と植え込みに阻まれている。Google先生も細かい駅舎への行き方までは示してくれないし、ここから回り道を探すのもめんどくさい。ええい、ままよ。積もった雪をかき分け突き進め。


奥に見える道路が国道。この雪の中をずんずん進んできた。


ホームに降り立ったところ。駅名標の左後ろに努力の跡が。


雪は膝の高さまで積もっていた。やっぱりこれは回り道した方がよかったかな…一度入ってしまってはもう遅い。誰にも見られていないことを願いつつ、一歩ずつ進んでいく。雪と格闘すること数分、小高くなった場所を乗り越え、駅のホームにようやく到達した。これもし誰か駅にいたら、道なき道から訳分からん人がやって来るってことになり大分ホラーだよな…。なんだか余計な体力を使ってしまったがいかにも秘境という感じがして興奮度はマックス。およそ似つかわしくない立派な木造の駅舎もポイント高い。ここもあと僅かで廃止か…。




駅舎側からしか道が繋がっていないようだ。駅名標も埋まっている。


40分くらい駅で列車を待ち、7時54分、またしても森駅へ。これで廃止予定の4/10駅制覇。次は蕨岱に行きたいのだが、時間が全然上手いこと合わないのと折角特急を6回まで使えるんだから有効活用しなければならないと、室蘭本線の支線を完全下車しに行った。もうね、廃止予定駅のある根室本線とか釧網本線とかは3日じゃ無理!! 遠すぎる!! 本数少ない中じゃ函館本線の5駅と千歳線の1駅行くので精一杯だよ!!


室蘭支線は終点・室蘭のほか母恋、御崎、輪西、東室蘭の5駅。



長万部→蕨岱

中略。室蘭本線の支線を完全下車し終わった私は東室蘭駅から特急に乗り、再び長万部駅に来ていた。ここから函館本線、通称山線で蕨岱駅に行く。間違えないように、運転士さんにこの列車が蕨岱に行くか聞くと「行きますよ〜撮り鉄の方ですね(ニコッ)」ってしてくれたので惚れたホモじゃないけどアッーな展開に持ち込んでもよかったけど蕨岱に降りられなくなるので大人しくシートに座った。


函館本線・倶知安行。


時刻は13時32分。15分ほど走って蕨岱に辿り着いた。さっきの運転士さんと別れるのは名残惜しいが、これも仕事だ、致し方ない(仕事じゃない)。降りて何に驚いたって、もう一人降りてきたこと。北豊津と違い、こちらは完全にテツの方。残念ながら言葉を交わせそうなオーラではなかったのでそれぞれ邪魔せぬよう思い思いに過ごす。ていうか駅舎に雪積もりすぎ。廃駅になる前に倒壊するのでは…。






さて、折り返しの列車は30分後に来るので、今回は歩くことはせずこの駅を満喫することにする。手始めに駅ノートに書き込み、ぱらぱら捲っているとファンには嬉しい書き込みが。




我々降り鉄のパイオニア、国内全駅下車という偉業(?)をやってのけ、漫画・鉄子の旅で案内人を務めた横見浩彦さんの書き込みがあるではないか。まぁだからといって何がどうなるわけでもないが何となくテンションあがってきた。さてさてそろそろ列車が来る時刻かな。


蕨岱→長万部 ほか

来ねぇ。
マジかよこの後結構シビアなタイミングで特急乗らなアカンのに。15分程遅れ、ようやくやってきた。ちなみに、当初は14時19分に長万部に着いて、14時24分に特急に乗るはずだった。15分遅れということは、長万部着は14時34分。ダメじゃん。まぁまぁどうせこういうときは大抵、到着を待つもんだ。「乗れるんでしょ?」と車掌に聞いてみたら一時間後の特急に振り替えて下さいとのこと。FUUUUUUUUU!! ダメじゃん!! ふざけんな!! なんだよ山線のくせになんだよこの中国人の乗車率!! 美々駅行けねぇじゃん!!


腹が立ったのでまんべくんシールとかに最中を買いました。


自分のツキのなさを呪いつつ、特急に乗り込んだ。こうなったらもういい、どうせこの日の宿は札幌だ。適当に千歳線を降り潰してスタンプを集めてやる。札幌では味噌ラーメンを食べました。おいしかったです。


長万部で特急に乗ってとりあえず新札幌へ向かってみる。


冬の札幌はなんだか幻想的。



3日目 札幌

あーよく寝た。前日あんだけ悪態ついたけど寝たらスッキリした。もうね、この日は美々駅に行けたらいいやという半ば諦めの境地。そして折角冬の札幌に来たんだからこれを見ておこうと思って地下鉄に乗った。




さっぽろ雪まつりにぃ…来たー!! 夏の北海道では観光らしい観光などしなかったから、実に新鮮だ。下手な建物より大きい雪像を作ってしまう日本人に乾杯。初めて来たけどアレだね、時流を押さえていて実に面白いね。けど一人で来るもんじゃないね。






ぶっふぉーん。
ミクたんハァハァ。デュフフ雪ミクたんかわいいおフォカヌポゥ。おっとこれではまるでオタクみたい。拙者オタクではござらんのですが、世の中にはホントに凄い人たちがいて、なんだよこのドールとキャリーとかは。折角なので借景(違う)させていただく。


札幌→南千歳→美々

あ、行きます? 美々? 雪まつりだけでいいんじゃないきょうはもう。ミクたんかわいいし。ほら、グッズも買わなきゃだし…。と、紙幣を取り出そうとした瞬間だった。レシートに挟まった緑の切符が顔を覗かせた。

(ゐわむら…ゐわむら…聞こえますか…12時20分札幌発の快速エアポートに乗りなさい…)

まぁ切符が脳内に直接話しかけてきたってのはさすがに嘘だけど、それは6枚目の、つまり最後の指定席乗車券だった。行かなくては——!! 自分のすべきことを思い出した俺は最寄りの地下鉄西11丁目駅に向かって駆けだしていた。雪ミクのクリアファイルを片手に!!




地下鉄、JRと乗り継ぎ、南千歳へ。美々などがある南千歳〜苫小牧の区間は本当に本数が少なくてなかなかダイヤの組み立てが難しいのだが、13時17分南千歳発、13時21分美々着の上り線を使えば、13時36分美々発の下り線を捕まえることができる。これで美々に降りられればホントにもういいや。ってかもう根室本線と釧網本線の4駅は無理!! 3日で6/10駅巡ったことをむしろ称えてくれ。






美々では札幌に近いこともあってか、私の他に2人が降りた。いやその人らもテツだったから純粋な利用者は実質ゼロだけど。ただ、駅の利用者がいるのは間違っていないようで、



廃止のお知らせより目立つ“駅寝禁止”のお知らせが。いや、いくら風雨を凌げるっつっても冬の北海道で駅寝は死ぬだろ…。うーむ、頼むから迷惑かけないでくれよ…。


超高速帰宅




15分の滞在を終え、新千歳空港に向かう。さすがに帰りは航空機を使うことにした。余裕を持ってチェックインを済ませるとフライトまで2時間ほど暇になってしまった。とはいえ充実している新千歳空港、探検していれば2時間なんてあっという間だ。



雪ミクスカイタウン! なるほど、そういうのもあるのか。ようし、ならば!!



ミク!


ミクゥ!!


ミクたん!!!


はーミックミクにされた。ここまでやっといてアレだけど、俺、別にそこまでミクファンという訳ではないんだよなぁ。さ、帰ろっと。



あーしんど。いや全然3日で北海道っていうのはアリだと思うけど、エクストリーム・乗り換えをしに行くのはどうかと思った。やっぱり5日間くらいほしい。せめてあと1日あれば、もうちょっと上手いこと回れた気がしてならない。さらば、稲士別、上厚内、島ノ下、五十石。北海道では近いうちにまた多くの駅や路線が消えてしまうのだろう。時代の流れもあり致し方ないのかもしれないが、やはり我々がもっと利用するべきだし、国や道、沿線自治体はもっと支援しなければならないのではないかと、隣のシートに座るかわいい眼鏡っ娘を尻目に考えていた。まぁ後ろのシートに彼氏っぽい人が座ってたんだけど。はぁ〜あ。翌日仕事だったよチクショウ。

ちなみに旅行の総額はというと、行きの新幹線2万、フリーきっぷ2.6万、飛行機1.4万、帰りの特急と新幹線0.6万、宿泊費2万、食費1万、しめて9.6万。9.6万!?  台湾でも行ってくればよかった。


超高速で宇都宮に帰投。