♪ダイコー、ダイコー、鉄路が好き〜

 前日、名寄から稚内、そして苫小牧という650キロの大移動を果たしたため既にグロッキー状態だが、きちんと起きるのが偉いところ。社畜として飼い慣らされた賜というほかない。ゲェー。ちなみに、なぜわざわざ最北端から南下してきたかというのは、(書き忘れなければ)いずれ明らかになる。

 朝はサービスのパンとコーヒーをいただき、足早に苫小牧駅に向かう。駅といってもこの日乗るのはバス。代行バス。賢明なテツの皆様ならもうお分かりだろうが、乗るのは日高本線である。日高本線は苫小牧から様似を結ぶ鉄道路線だが、2015年の高波などで線路が流出した影響で鵡川から様似まで116キロの区間が不通となっている。そして今回の胆振東部地震で橋桁がずれたことにより、残った苫小牧から鵡川もバス代行となってしまった。だからこそ今、日高線全線をバスで走破せねばならないのだ。

朝食
朝はコーヒーがないと始まらない
苫小牧駅
苫小牧駅南口にバス乗り場がある


 苫小牧駅南口でバスを待っていると、少し遅れてやってきた。鵡川からの通勤通学の人たちを乗せたバスがそのまま折り返し鵡川へと向かうことになる。文字通り一番乗りだった私のほか、乗ってきたのは3人くらい。さらにJR北海道の職員が車掌(または案内係)として乗務する。ちなみに北海道フリーパスは代行バスでも使える。

代行バス
観光バスを貸し切って運行する代行バス
代行バス
JR列車代行バス御一行様


 苫小牧の市街地を抜けると途端に人気の少なくなる通りをバスはひたすら突き進む。バスなのに鉄道駅の前でしか停まらないというのはやはり妙な感覚だ。乗務に当たった職員さんは各駅で降りて、駅舎内で来るはずのない列車を待つ人がいないか確認に走っていた。この辺りは地震の影響が大きかっただろう地域だし民家も少ないしで、結局待っている人はいなかった。当たり前なのかもしれないがこういうときにきちんとケアするJR北海道の姿勢は素晴らしい。車内では駅に着くたびに、何分遅れで到着したか、ということを(おそらく)鵡川で待つ次のバスドライバーに連絡していた。さらに我々に対し鵡川から先、乗り継ぐかどうかを尋ねる。手を上げたのは私だけ。えぇ…。

日高本線
バスから見る線路
勇払駅
勇払駅。乗務員さんが走って確認しに行く
苫東厚真発電所
多分正面に見えるのは苫東厚真発電所
日高本線
本当だったらあの鉄橋を走っていた


鵡川ってアレだ、マキバオーだ


鵡川駅
緑と赤のコントラストがチャーミーな鵡川駅
代行バス
ここからは別の代行バスに乗り換える


 鵡川では次のバスが私ただ一人を待っていた。うーん、なんというVIP待遇。駅でトイレを済ませ、バスに乗り込む。このバスは静内駅まで行くが、私はご当地入場券購入のため途中の日高門別駅で降りることにする。それまではしばし運転手さんと2人の旅路を楽しむこととなる。鵡川の駅を出た途端に景色は一変した。市街地のそこかしこに地震の爪痕が残っているのだ。割れた窓ガラス、1階が押しつぶされた建物、ひび割れた道路…。地震の恐ろしさを改めて思い知らされる。ところでここからは列車が来なくなって3年以上が経ってしまった地域で、鵡川の次の汐見駅の寂寥感といったらドラゴンボールでいうところのユンザビット高地かってくらい。

 運転手のおっちゃんはかなりフレンドリーで、一人ぽっちで旅をする私を気遣ってかいろいろと話しかけてくれた。この辺りは特に被害が酷くて、道路も前日まで通っていない部分があって代行バスのルートを変更せざるを得なかったり、フレコンバッグにダメになった家財道具などを詰め込んでいたりと、この地域で働く人だから見える視点ばかりだ。

むかわ町
むかわの街なかはかなり酷い状態
代行バス
道も迂回させられる状態
汐見駅
もう2年くらい列車の来ていない汐見駅
門別競馬場
マキバオーとかも走ったんじゃない?


 さらに、なんで日高門別なんてところで降りるのか聞かれ、きっぷを買いにセイコーマートまで行く旨を告げたら「セイコーマート前で停まろうか?」と提案してくれる温かさよ。代行バスも平日の日中は利用する人の数も少ないようで、多少融通が利くとのことだったが、流石にそれで何かあっても申し訳ないので、予定通り日高門別に降ろしてもらうことにした。



門別でもバスが来ない

集積場
ダメになってしまった家具やらが集められていた
日高門別駅
予定通り日高門別駅に到着





 日高門別は無人駅。列車が来ないことで人気は一層なくなり、使われなくなったホームに生い茂る雑草がもの悲しさを増している。日高門別はそれなりの街並みだが、駅前は閑散としていた。タクシーなんてのはないからセイコーマートまで約1.2キロの道のりをひたすら歩く。9月というのにこの日も陽射しは暑く、セイコーマートに着く頃には汗だくになってしまった。

日高門別駅
ホームが荒れ果ててしまっている
日高町
道を下っていった先には海
標識
うち捨てられた町道の標識
セイコーマート
セイコーマート門別緑町店

わがまちご当地入場券
わがまちご当地入場券日高門別駅(16枚目)。

ハスカップアイス
冷たさと酸っぱさがひとときの癒やしに


 セイコーマートでご当地入場券を無事ゲットしたらもうやることはないので次の目的地、静内へ向かう。日高門別駅近くの門別停留場で道南バスを待つ。そう、日高門別で降りてしまうと次の代行バスは何と13時台。それじゃ時間がもったいなさ過ぎるので路線バスも活用するのであった。そして帰りに代行バスを使えばこの区間も完乗になr…って待て、帰りは接続の関係でレンタカーを使うことにしたんじゃなかったか。なんてこった。プランニングを間違えた。日高門別の入場券と引き替えに日高本線完全乗車の機会を失ってしまった。ええい、やっちまったものはしょうがない。道南バスに乗って静内へ向かうしかない。チクショー!! つーか北海道でもバスが定刻に来ねぇ。ドチクショー!!!!

門別停留場
このバス停で過ちに気付いた
道南バス
過ぎたことに囚われても仕方がない


静内から先はいよいよダメかもしれない

 遅れてやってきた道南バスに乗り込み静内駅を目指す。到着予定は1132時。静内からは正午に正真正銘、終点・様似行の日高本線代行バスが出るのでそれを目指す。道中、車窓の景色をパシャパシャやっていると不自然に途切れた鉄橋が。これが例の高潮で流出したという日高本線の線路か。これは確かに復旧させるのはしんどいかもしれないなぁ…。さらに別の踏切でふと目をやると雑草が線路を侵蝕してしまっている。ダメだこりゃ。そんな沿線を突き進んでほぼ予定通りに静内駅に到着。

慶能舞橋
崩落した慶能舞橋
日高本線
列車を通す気がない線路


わがまちご当地入場券
わがまちご当地入場券静内駅(17枚目)。



 静内駅はみどりの窓口があるので入場券も買えるし、駅スタンプだって押せる。そして列車の来なくなったホームにも入れさせてもらえた。まぁ入場券買ってるからそりゃ可能っちゃ可能だけど。駅名標はしらっちゃけてライトも外れてしまっている。そりゃあ誰も使わないホームを改修してもしょうがないかもしれないけどさ、やっぱりなんかもう「復旧させませんよ」って宣言しているようで悲しいなぁ。ちなみに駅には新ひだか町観光情報センター「ぽっぽ」が併設されていて、ちょっとした食料やお土産なら買える。あと大分ボロボロになってはいるが3種類の観光記念スタンプが置かれているからスタンパーは要チェックだ!!

静内駅
ホームで待つ人の姿はない
静内駅
ライトもぷらぷらしている



 静内は様似方面の代行バスの始発になっているのだが、ここで悲しいのが運行業者がジェイアール北海道バスということ。方向幕も「代行バス」表示になっていて、なんつーかもうJR北海道は静内から様似はバスで復旧させちゃったからもう鉄道は廃止ねって言われているような気がしてならない。鵡川から静内のように他の会社に委託しているような状況ならまだ「これは一時的な措置ですよ」って言い訳ができそうなものだが、関連会社となるとなし崩し的に鉄道の日高本線を廃止して路線バスの日高線を新設することになるんじゃないかな。もうそういう運命を辿るのは気仙沼線と大船渡線で終わりにして差し上げて。

静内駅
ジェイアール北海道バスが代行を担う
代行バス
方向幕もしっかり列車代行に


まさに様似

代行バス
沿線で馬が放牧されているくらいのどか
蓬栄駅
蓬栄駅…っつーかトイレじゃん
様似町
様似町のカントリーサインが見えてきた
様似町
海沿いの素敵な町って感じ
 

 正午に出た代行バスはきっちり全ての駅、もしくは駅近くの空き地などに停車しながら一路様似駅を目指す。狭い道を入ってUターンしたり、道路状況に左右されたり、やっぱりバスは大変だ。全体的にのどか〜な道で景色はそれなりに楽しめるけど、やっぱり様似まで2時間かかるのはしんどいなぁ。ようやく様似町のカントリーサインが見えたときはちょっと小躍りしそうになった。




 

 1352時、日高本線終着駅、様似に辿り着いた。終着駅らしくこぢんまりとした様相のその駅舎は緑色の屋根が青空に良く映えていた。しっかり待合室が設けられ、きっぷ売り場もあった。ご当地入場券のほか、硬券入場券も2種類取り扱っていた(元々3種類だったが1つは完売)。ここもホームに出させてもらったが静内同様、このまま列車が来ることが叶わぬまま廃れていく運命なのだろうな…。センチになる私に呼応するように潮風が私の頬をなぜてくrそんなことよりセルフィーだ!!

わがまちご当地入場券
わがまちご当地入場券様似駅(18枚目)

様似駅
緑の屋根がいい味出している様似駅
様似駅
待合室も完備
様似駅
終着駅もやっぱり列車は来ない
様似駅
この旅でセルフィーの敷居は大分低くなった


   駅舎には様似町の観光案内所が併設されていて、駅スタンプやら観光スタンプやらはこちらに置かれている。案内所のおばちゃんが「観光かい?」と聞いてきたので「ええ、次のジェイアールバスで帰りますけど」つったら「あらーあと40分くらいしかないけど真っ直ぐ行った海からエンルム岬が綺麗に見えるわよ」なんつって教えてくれたので、荷物を預かってもらって探検してきた。海岸線には歩いて3分くらいで到着。よく晴れていて潮風が心地いい。時間があれば散歩したいくらいだが、時間はないのでそのまま引き返す。駅の向こうに様似郵便局があったので立ち寄って風景印を押してもらった。そういえばFくんの行きつけのスナックのママだかが様似出身とか言ってたなぁ。俺には全く関係ないけど。そうこうしているうちにバスの時間だ。やってきたジェイアール北海道バスでこんだ、浦河駅へと向かう。

エンルム岬
やっぱり海はいいね
エンルム岬
いつかは岬めぐりをしたいものだ
様似郵便局
風景印も集めているんですよ
様似停留所
こぢんまりとしたバスの待合室


   ところで様似駅にはこんな看板があった。



   止〜まれ 命大切に

 か、かるぅい。



浦河駅スタンプはかなり押すのが難しいから頑張れ

 

 今回の行程でこの日に日高本線を行くことにしたのは、何を隠そうここ浦河駅に行きたかったからなのである。浦河駅には駅スタンプがあるが、窓口が開いているのは水曜と土曜、それに第2・4月曜の1200時から1620時だけなのである。この日は水曜で時間は15時台。規則の上では開いているのだろうが、やはり実際に行ってみないことには分からない。さー、果たして窓口は開いているのだろうか…。



浦河駅通停留場
ジェイアールバスの路線バスが停まるのは「浦河駅通」
浦河駅
あれに見えるが浦河駅
浦河駅
跨線橋を渡って…
浦河駅
ホームに出る。さて窓口は…

 

 開いてたー!!!

 完全勝利。駅員さんにほくほく顔で駅スタンプを出してもらったし下車印も押してもらった。ただしご当地入場券はちょっと先の観光協会の建物で販売しているというので、マルスの入場券を発券してもらった。いやー計画通り進んだときほどすかっとするこたぁないね。とはいえこの駅でだらだらしていても仕方がないのでさっさと観光協会へと歩を進める。

 駅から歩くこと10分弱。この辺りは漁港があるからか何となく賑わいがあって楽しげだ。そんな人の気配に触れたからか、ふと思い出したのが空腹感である。時刻は15時半。昼には遅いし、夕飯には早い時間だ。そんな中、「藤まん」という寿司屋だけがのれんを出していた。ダメ元で入ってみたら、やってくれるという。じゃあお言葉に甘えて…とちらしを注文。でもねぇ、1618時に駅に戻って代行バスをつかまえなきゃいけないわけで、そうなると遅くとも1610時には店を出なきゃいけないわけで、でもね、しっかり作り込んでくれたから、出してくれたのが1555時。でもせっかく作ってもらって残すのははばかれたから15分足らずで全部掻き込んだ。うん、じっくり味わう間もなかったね。むっちゃ美味しかったからなお残念だった。っつーか女将さんも「えっ、まさか丸呑みしたの?」とでも言いたげな表情になってたよ。みんなは時間にゆとりを持とう!!

わがまちご当地入場券
わがまちご当地入場券浦河駅(19枚目)

うらかわ観光協会
左側の建物が観光協会
漁港
あーいい雰囲気の港ねぇ
藤まん
おっやってる?
ちらし寿司
うわー!! 海沿いの町ならではだね!!


道道巡り(巡ってない) 〜道央フリーウェイ〜



 ちょっと遅れてやってきた代行バスには地元の高校生がもうぎっしり乗り込んでいた。生徒らの「何だコイツ」というような視線にも臆することなく一つ空いていたシートに腰を下ろす。ここまで旅を続けているともう恥ずかしいことなんてほぼないのさ。駅に停まるたび、生徒らは1人、2人と降りていき、結局最後の静内まで残ったのは1人。まー1時間半もかけてバス通学はきついよなぁ…。鉄道の方が早いし楽だろうになぁ。復旧しないかなぁ。

 静内には1744時到着予定だったが着いたのは18時前。この後も代行バスに乗ると鵡川までしか帰れなくなってしまうので、前述の通りレンタカーを使う。

浦河駅
代行バス乗り場は浦河町の役場前に
代行バス
キタキツネも黄昏れる
静内駅
静内駅にもあかりが灯ってきた
トヨタレンタカー
こいつで北の大地をひた走る


 レンタカーで向かうのはトヨタレンタカー新千歳空港ポプラ店。札幌に近く、遅くに乗り捨てできるのがこの店舗だったからである。それと途中、浜厚真駅のご当地入場券を取り扱うセイコーマート厚真店。数あるご当地入場券の中でもJR北海道のウェブサイトで「浜厚真駅から、徒歩や公共交通機関でのアクセスは困難です。」と書かれるくらいの敷居の高さ。せっかく車を借りたのだから、浜厚真駅には降りていないが買いに行くことにする。まだ地震で大変なときに…という人もいるかもしれないが、少しでもお金を落としていこうと思う。



 割と最近できた日高厚賀ICから日高自動車道に入りひた走る。あんまり交通量もなくスイスイ走れるが灯りも少なくてちょっぴり怖い。無料だからあんまり文句は言えないけど…。



 厚真ICで降りて厚真町内に入ると、地震の爪痕がそこかしこにあって痛々しい。元々人気のないところだろうに一層静けさを増しているように感じる。そんな中でもセイコーマートは営業していた。食料や日用品も最低限は揃っていて、地元の人たちが当面の食料などを求めて買いにやってきていた。あんまり邪魔にならないようなタイミングを見計らって店員さんに話しかけ、無事購入させてもらえた。応援の意味を込めて5枚も買ってしまったよ。

わがまちご当地入場券
わがまちご当地入場券浜厚真駅(20枚目)



 さあ、あとは空港に向かうだけだ。土砂崩れの痕跡がある道道10号を車のヘッドライトで照らしながら突き進んでいると、視界を横切る黒い影が。慌ててブレーキを踏むと、その正体はなんとエゾシカの家族。ぐわー、そんな当たり前のように飛び出すなよ鹿…。何にしても衝突しなくて良かった。そのまま車を発進させると、今度は車と平行になって同じ方向に進んできたうえ蛇行して道のど真ん中と路側帯を行ったり来たりし始めた。私がどうしたものかノロノロ走っていたら、後ろからフツーに地元民の車が追い越していった。鹿なんてものともせずに。やっぱ道民ってタフだわ。

 こういうときに限ってカメラを回していない自分を呪いつつも、無事にレンタカーを乗り捨てるトヨタレンタカー新千歳空港ポプラ店に辿り着いた。ここからはシャトルバスで空港まで送ってくれるので楽ちんだ。空港は別にバスの行き先だから行くだけなのだが、駅スタンプが更新されていたのでしっかりゲット。千歳線で札幌へ。

トヨタレンタカー
シャトルバスから撮影したネオン
ポプラ号
ものの数分で新千歳空港に到着。車で来るのは新鮮だ
新千歳空港
駅スタンプが更新されていた
札幌駅
やっぱり薄暗い札幌駅


 この日もかなり移動したが、時刻は珍しくちょっと早い22時前。せっかくの札幌なので駅近くのラーメン屋へ。んあー濃厚なスープがつかれた身体に染み渡る…。翌日は0700時丁度に札幌駅を出て根室まで行かなければならない。1回の旅で北海道の北の端と東の端に行く辺りアホだけど仕方がないね。

さっぽろラーメン桑名
駅前で札幌ラーメン
ラーメン
ああー美味いんじゃー