オイオイオイ 白老ぜアイツ ほう閑散としたホームですか
眠い。前日あんだけ歩き回ったのに0515時に起きるという絶望のスケジュールに文字通りあくびが出るわ。というか止まらん。この日は胆振方面、室蘭本線を中心にご当地入場券を集めることにする。なんだかんだで降りたことのない駅が多いので楽しみ。まずは札幌を0600時きっかりに出るスーパー北斗2号で苫小牧へ向かう。朝食は前日のジンギスカンと打って変わって、コンビニおにぎり。とほほ。
まだ明け切らない朝の札幌駅
折角の北海道フリーパスなので指定席を取った
入𨦇印だの下車印だの増えてきた
せめて北海道っぽい具を
0644時、苫小牧ではたった3分の乗り換え時間で普通列車にトランスファー、白老駅に向かう。約25分のトリップでたどり着いた白老は、アイヌ文化が根差している街のようで、駅スタンプにもその絵柄が見て取れる。駅舎はいかにも北海道の中間駅、というようなこぢんまりとした雰囲気であった。驚くべきは、たいてい待合室の壁に掲げられているきっぷ運賃表が、イーゼルに直置きされていたこと。流石にこういう掲示の仕方は初めてだ。これがアイヌのウパㇱクマによって連綿と受け継がれてきた文化か。違うか。
3分で乗り換える
白老駅も昔ながらの改札
運賃表をイーゼルに直置きするのは初めて見た
スタンプは劣化気味
わがまちご当地入場券白老駅(60枚目)
ムロラン・ルージュ 〜フミキリ・カンカン〜
白老でのお仕事を終え、後続の426Dで室蘭駅へ向かう。室蘭駅は絵鞆半島に突き出したところにあり、室蘭本線の支線の終点である。室蘭本線の室蘭駅なのに室蘭本線の支線にあるというちょっぴり不遇な扱いで、室蘭駅に行くためには大抵本線上にある東室蘭駅で乗り換えなければならない。だがこの426Dは数少ない直通列車であるため、乗り換えることなく室蘭まで行けて大変素晴らしい。私としてはこれまで2度室蘭駅に行ったことがあるが、いずれもすぐ折り返してしまったので今回は30分ほど滞在することにした。駅前には旧室蘭駅というのがあり、そこにもスタンプがあるというので行ってみよう。
室蘭まで直通!!
車内は閑散としている
室蘭駅で線路が途切れる
いい天気だ
わがまちご当地入場券室蘭駅(61枚目)
0832時、どん詰まりの室蘭駅に降り立ち、とりあえずご当地入場券を手に入れる。さて、国の登録有形文化財である旧室蘭駅舎に行ってみるのだが、歩きだと8分くらいかかるというので、滞在できるのは約15分。意外と駆け足だな。
何とな〜く潮の香りが漂う気がする駅前の道路を進んでいくと、立派な木造の旧室蘭駅舎がどっしりと構えていた。目の前にはバス停、構内は住民向けの待合室、そして鉄道関連の展示スペースとなっていた。さらに窓口があったであろうところには観光案内所が入っていた。しかし1912年に建てられた駅舎が、1997年まで使われていたというのだからたまげたものだ。旧上砂川駅といい鉄道遺産は結構楽しいな…。もう少しじっくり見物したかったが列車の時間が迫っているので足早に切り上げ、現・室蘭駅に戻る。
立派な佇まいの旧室蘭駅舎
構内は結構広い
かつて使われたのであろうサボが並ぶ
レアなサボはガラスケース内に
室蘭駅スタンプは劣化が激しい
旧室蘭駅舎のスタンプは非常に綺麗
今回は旧室蘭駅舎しか行くことは叶わなかったが、室蘭は地球岬なんかがあるステキな港町なのでいずれはきちんと時間を取って訪れたいものだ。私がホームに戻ったときには、既に入線していた列車が発車の時刻をただ実直に待っていた。この427Dも素晴らしいことに本線に直通するため、終着の登別駅まで一本で行ける。
登別といやぁ、欧州連合、そしてアメリカ最大の都市でしょう。なんのこっちゃ。いい湯に入浴ってな。寒い? ここは北国だからなァ。おあとがよろしいようで。6分しかゆとりがないが窓口は空いていたし、スタンプも待合室内に置かれていたし、駅舎自体もそこまで離れて撮る必要がないサイズだったので一通りこなすことができた。知名度の割に小さい駅なのね。
こんだ登別へ
運転士さんの鞄っていいよね
知名度とは裏腹にちいちゃい登別駅
スタンプは2種。時間が少なく残念な出来になってしまった
行き先は函館か札幌というアバウトっぷり
スーパー北斗6号に乗って伊達紋別へ
わがまちご当地入場券登別駅(62枚目)
伊達ハリー
登別で乗るのは特急スーパー北斗6号。北海道は鈍行もいいが、やはりゆったり座れる特急はありがたい。それもこれも北海道フリーパスのなせる技である。18きっぷや北東パスだとこうはいかないからなぁ。
再び南下し、向かうは伊達紋別駅。乗車時間は約30分ほどだし、特にすることもないので車窓の風景をパシャパシャ撮っていると、とたんに線路が複数現れた。車両基地だろうか、いや、あれは…
東室蘭駅だ! 貨物の!
貨物には大して興味ないけど「駅」はいいものだ。近年では貨物の秋田港駅に降りられるツアーがあるというのだからそろそろ貨物駅も訪問の対象に加えることも考える必要があるのかもしれない。貨物の駅があることもあり、この辺りは工業地帯の様相を呈している。これは知らなかったんだけど日本五大工場夜景の一つに選ばれているらしい。やっぱり室蘭エモいじゃん。
太平洋を望みながら南下する
夜は綺麗なんだろうなぁ、という工場
工場夜景に思いを馳せつつ特急に揺られること約30分、列車は予定通り伊達紋別にたどり着いた。かつてはここから洞爺湖の東を通って倶知安へと至る胆振線が出ていたという。こちらはJRになることなく1987年に廃止されてしまった。そんな伊達紋別駅であるが、Wikipedia先生によると、乗降人数は981人/日(2017年)。特急停車駅で1000人以下という数を多いとみるか少ないとみるか…。建物自体は立派な木造駅で駅舎フェチにとっては申し分ない美しさだと思う。
伊達紋別駅。胆振線の始発だった駅だけあり立派だ
みどりの窓口も存命
わがまちご当地入場券伊達紋別駅(63枚目)
室蘭本線のご当地入場券は残すところ洞爺と豊浦、そして早来の3種類となった。早来は逆方向なので後で行くとして、洞爺と豊浦は6キロほど離れているが隣駅である。隣接した2駅に行くだけで簡単そうに見えるのだが、そうはイカのキンタマよと言わんばかりにダイヤの壁が立ちはだかった。
現在時刻は1020時を回ったところで、後続の474Dは丁度豊浦止まり。じゃこれに乗って豊浦に行った後、9分後の折り返し列車で洞爺に行けばパーペキじゃないか。だが豊浦は無人駅。ご当地入場券を取り扱っているのが天然豊浦温泉「しおさい」っちゅうところで、それがまた1.5キロほど離れていやがるのよ。これはあかんね。豊浦で一本待てばいいじゃねぇか、ってあんさん、その次は13時台ですぜ。
んじゃどうしたもんかって、駅に来るのはなにも列車だけではないのだよ。渡りに船、もといバスが都合良く出ているのだ。しかも行き先は豊浦温泉前っちゅうことで、ご当地入場券を買うなら鉄道より便利じゃん。
駅前の停留所で道南バスを待っていると、なにやら道路のほうからこつ、こつと音がする。
カラスだ。ははあ、殻を割ろうと上空から木の実を道路に落としているんだな。何度やっても割れる気配はないのだが、一心不乱に繰り返している。そこに置いておけばきっと車が割るだろう。だが、このカラスは人の手を借りて得た木の実など価値がないと言わんばかりに、くわえては落とし、くわえては落とし、いつかその殻が割れることを信じているようだ。そう、重要なのは結果ではなく過程なのだ。スタンプだって「自分で押した」というプロセスがあって自分の中での価値が生まれてくるのだ。そんなことに思いを馳せていたらフツーに車が割っていった実を食べていた。はいはい、結果が全てよ。なにが自分たちのサッカーだ。勝たなければ意味がないんだ。大体鉄道のご当地入場券集めるのにレンタカーやバスを使う人間が過程が大事とか言うなよな。
伊達紋別駅前のバス停
バスで豊浦へ
伊達紋別駅を出てしばらくは市街地を進む
豊浦しおさいは近い
豊浦しおさいのメモリー
豊浦しおさい前停留所に着いたのは1115時。元々1119時に着くダイヤだったので少々巻いたようだ。しおさいはその名の通り海に面しており、時折吹く潮風が心地よい。ああ、このまま温泉につかれればどれほど素晴らしく、心が洗われることだろう。だがそれも叶わぬ夢。なんせ10分後の1125時に折り返しのバスが出るのだから。
しおさいの建物へ入ると、いかにも温泉施設のロビーが広がっていた。ご当地入場券は受付で発売かと思いきや券売機で利用券を買ってくれとのこと。温泉の利用券の隣に「小幌駅」の文字が並ぶのはシュールだ。
ちょっとした役場の建物のような豊浦しおさい温泉
豊浦町の入場券は小幌駅
わがまちご当地入場券小幌駅(64枚目)
温泉で小幌駅のスタンプを保管していることなどはないということだったので、これにてしおさいでの行程は完遂だ。1125時、折り返すバスで今度は洞爺駅に向かう。なんて的確で効率的なプランなんだ。
豊浦温泉の前に小さな商店があった
ホタテフライなるものが売られていたので買ってみた。んまい
再びバスを使う
海へ至る道だろうか、通行止めとなっているところも
バスはほぼ定刻通りの1143時に洞爺駅に着いた。1157時発の特急スーパー北斗7号に乗れればいいので、その間にご当地入場券の購入やらスタンプの押印やらを済ます。そうか、洞爺湖ってのはサミットがあった場所か。駅スタンプにもばっちりサミットの文言が入っているな。
洞爺駅に到着
サミット開催から10年以上経過してもまだ推す
スーパー北斗7号で苫小牧へ
洞爺駅のスタンプは改札外に
わがまちご当地入場券洞爺駅(65枚目)
さて、この後は1時間特急に揺られることになるのだから昼飯を調達したい。流石サミット開催地、駅弁屋さんが台車で販売しているじゃないの。こんな旧態依然としていてホントにサミットできたの? いや、でも侮ることなかれ。販売している駅弁を見て私はびっくりして驚いた。その理由がこれだ。
令和の時代に「DISCOVER JAPAN」
原色に近い赤・青・黄のデザインは、民営化も、バブル崩壊も、リーマンショックも、2度の改元も乗り越えてなお鮮やかに輝いているように見える。
中もご覧の通り、昭和から変わっていないだろうという昔ながらの彩りである。少々味付けが濃いのも一興。エネルギッシュだった頃の日本の片鱗がこういうところに残っているんだなぁ。いやエネルギッシュだったかどうかは知らんけど。
苫小牧で特急列車を降りた後は、今や支線のようになってしまった室蘭本線の早来へ行くのだが、千歳線との分岐駅・沼ノ端に寄り道する。意味? 下車駅数を稼ぐだけさ。
この日2度目の苫小牧
HOKKI POWER!
現代的な駅舎
沼ノ端駅は旧駅舎も残る
はるばる来たぜ早来〜
1349時、早来駅に到着。駅は無人だが同居する物産館でご当地入場券や一部の乗車券を発売している。物産館にはおそらくご当地入場券と同時につくったと思われる真新しい駅スタンプも置かれていた。
早来駅
上り線に道央・花の恵みがやってきた
どこに飛んでいくんだろう
駅前に車の類いが来る気配はない
わがまちご当地入場券早来駅(66枚目)
列車が行ってしまった後の物産館には、北海道のおおらかさを体現したかのようなのどかな時間が流れている。そういう時間が流れるということは次の列車がしばらくないということであり、それはつまり列車とは異なる方法で次の駅に向かわなければならないことである。
次に行きたいのは10キロ以上離れた追分駅。うん、これはタクシーですわ。でもね、そのタクシーが駅前にいないじゃないのよ。物産館で聞いたら「何を言っているんだこいつは」みたいな顔で「駅前にはいないですよ…」ですって。あっやっちまったかこれ。すると「きょうはやってるか分からないけど…」なんつってあつまバスの電話番号を教えてくれた。
なんでも、台数は少ないながらもタクシー事業もやっているらしい。こういうとき大抵天に見放されるのが私であるが、ダメ元で電話してみると30分後くらいなら行けるとのこと。追分発は1501時だからまだ全然間に合う。ビバあつまバス!! 大好き!!
やってきたタクシーの運転手さんはとても人当たりの良い方で、道中とりとめもない話で盛り上がった。歩けば2時間はかかるだろう道のりも車なら一瞬だ。運賃? 3500円くらい? 3500円がなんぼのもんじゃーい。なぜ高いカネを払ってまで追分くんだりまで来たかというと、乗り換えのためである。
追分駅にはかつて機関区があったという
構内には昭和37年の道内路線図が掲げられていた
タクシーで来た私が言うのもアレですが、乗ってください
特急に乗って…
追分で乗り換えて向かうのは、そう、新夕張駅である。この「がんばろうHOKKAIDO」シリーズにおいて私が訪問を切望していた駅の一つだ。前回の旅で夕張支線を完全下車しており、もはや訪れることはそうないだろうと思っていたのだが、夕張駅が廃止されたことに伴い夕張市のご当地入場券が装い新たに新夕張駅で発売されることとなったのだ。となるとやはりこれは行かねばなるまい。さながら一度帰ったのに再び1955年を訪れることになるマーティのよう。違うか。
1525時、新夕張駅に到着。一面の銀世界だった前回とは異なる様相を呈している。異なるといえば夕張支線のホームへ至る通路も無骨なパイプで封鎖されており、もう列車が来ないことをありありと実感させられる。だが既に夕張支線の全駅下車を成し遂げている私にとってもはやそんなことはどうでもよい。なんてったって窓口があと5分で閉まってしまうのだから。この列車から降りてきた乗客たちを捌くまでは閉まらないんだろうけど、何となく時間内に買っておきたいからね。
ところで新夕張駅のご当地入場券も旧夕張駅隣接のホテルマウントレースイで発売されていて、そちらは〇簡バージョンのようだが、もう鉄道で行けないのでパス。新夕張をもって、おおむねこの日予定していたことは完了だ。後は宿泊地の小樽へ向かうだけである。
またまたやってきた新夕張駅
ご当地入場券の案内も刷新
かつてはこの先に夕張行きのホームがあった
札幌へ向かうよ!!
わがまちご当地入場券新夕張駅(67枚目)
海鮮炒めじゃないんだよ (丼だよ)
1647時、薄暗くなってきたところで特急スーパーおおぞら8号に乗って札幌に向かう。札幌着は1803時。朝札幌を発ったのが0600時だったので実に丸半日ぶりに戻ってくることになる。それがどうした。まだその先、小樽まで行くんだ私は。
あっ
という間に1時間余りの休息の特急タイムが終わり、札幌に到着。普通列車に乗り換えて小樽方面へ。このまま小樽駅に行っても良かったんだけど、まだ夜も浅いので降りたことのない小樽築港駅で夕食にしよう。そうしよう。
小樽築港駅は実に小綺麗な駅舎だった。外へ出ると心地よい潮風が吹いており、歩くにはちょうどいい塩梅だ。
海に反射する街の灯りは実に情感があってよい。横浜ほどゴチャゴチャしていないので、落ち着いた大人の時間が過ごせそうだ。一人だけどな!! でもこんなに素晴らしい景色を見せられたらついつい財布のひもも緩んでしまうというもの。ふっふっふ、せっかく港町にいるんだから、アレを食べちゃうぞ。食べてやるぞ。
あれが今宵のお食事処にございます
ふふふ…格調高そうじゃないか…
やってきたのは海沿いにある海石榴というお店。おお、なんだかよさげな雰囲気だぞ。俺は頼んじゃうんだ。誰が何と言おうとアレを頼んじゃうんだ。
はいどーん!!
新鮮な海産物を、これでもかと言わんばかりに贅沢にオンザライス。昔ながらのシンプルなおみおつけが、ただでさえ輝かしい海鮮丼をより引き立てている。北海道3日目にしてようやくまともな食事である。それでは早速いただきま〜す!!
うっま… これぞ北海道の味よ!!!! 脂がプリプリにのった刺身だからっ、冷酒か、いやここはやはり生ビールッ…!! キンキンに冷えた黄金の液体が五臓六腑に染み渡り、火照った体温が一気に冷まされていく。豪遊である…!! カイジさながら…豪遊である…!!
グルメ漫画のようにひとしきり飲み食いしておなかも心も満たされたところで、ほろ酔い気分で小樽駅に向かう。
大正浪漫の塊のような小樽駅
この駅名標が最高
わがまちご当地入場券小樽駅(68枚目)
レトロな駅名標が残る小樽駅がこの日の最終地点。まだ20時を回ったところだというのが驚きだが、まあ朝も早かったし、なんなら翌日も早いしちょうどいいのかもしれない。
宿は小樽駅からほんの少し歩いたところにある小樽グリーンホテル別館。なんと1泊2000円という破格っぷり。まあ安いのはそれなりの理由があって、カーテンで仕切られただけのドミトリーっていうことと、シャワーが一度に一人しか使えないこと。それでもちゃんとしたスプリングのベッドだったし、決して悪くない。
だけど夜も更けたというのにずーっとキーボードとマウスをカチャカチャやってたヤツだけは絶対に許さない環奈。翌日はやっぱり早起きして山線だ。耳栓を持ってこなかったことを後悔しながらもいつの間にか深い眠りの中へ落ち込んでいった。
ホテルは駐車場を改造したっぽい
豪遊は続く…